忘却の彼方に

 ずっと先送りにしていた部屋の片づけを朝からしていました。
 物を中々捨てられない性格で、ついつい貯め込んでしまうのです。
 貯めるのはお金だけでいいのにね。
 で、今回は一大決心のもと処分しました。
 
 大分片付いた頃見覚えのないファイルケースが落ちてきました。
 なんだろと思って開けてみると中から出てきたものは…。
 
 そのぉ、高校の時に私、文芸部なんてやっておりまして。日々創作活動に勤しんでいたのですが、その時のゲラでした。
 ついつい読んでしまい(こーゆー事してるから終わんないんですね)改めて誰にも見つからなくて良かったぁとホッとしました。
 例えば私が不慮の事故に遭い、部屋を整理した両親がこれを読んだらと思うと、想像しただけで嫌な汗が出てきます。
 ましてやそれを葬式にきた人たちに、こんな物が出てきてね…なんて回し読みされたときにはもう、奇跡的に生き返ることが出来ても、お願いだからいっそ殺して下さいってお願いするだろな。
 
 ってくらい読んでて恥ずかしくなるものでした。
 ま、こんな時代があったのね私、あーおバカさんって感じです。
 タイムマシンで当時に戻り校正したいくらい。

 でもあの頃はなんか書くだけでもう楽しくって。
 もう夢中でした。
 勉強もせず、ノートに設定やストーリー書いて、後で見てもなに書きたかったんだろ私、なんてのもありましたが。
 原稿用紙を埋めていく度に少しずつ違った世界が見えてきて、今いるところから飛び立てそうな気すらしてきましたから。
 想像で、ですが。
 ストーリー展開で仲間とぶつかったり、偉そうに批評し合ったり。
 今みたいにパソコンなんてないし、ワープロで原稿を書くという事に憧れてたっけ。
 
 ま、それでも作家になりたいなんて思ってはいませんでしたが。
 
 そりゃなれたらと思っていた事が無いといえばウソになりますが。
 でも仲間の原稿や他の人の創作本を見せてもらい、自分には文才無いなっていうの、はっきり思い知りましたから。
 文才といいますか、センスのある人間の文というのは違うなぁって。
 多分後10年、20年やっても、この領域には達しないだろう、届きはしないだろうなって。
 この届かないっていう諦めの感情は、なんでしょ、人に対して、なんかふんわりと、でも強引にピリオドを打ちますね。
 創作の才能に見切りを付けて、早めに進路の選択肢から外したことは、今でも正解だと思っています。
 
 他の仲間でも作家になった人は一人もいません。
 そんなものかな?

 にしても、本当にこの原稿が誰かに見つかる前に発見出来てよかったぁ。
 明日、誰にも気づかれないようにきっちり処分しとこ。
 間違っても、取っておこうなんてものじゃないんだから。