怖い話。

 暑い日には色々な涼の取り方があります。
 エアコンのように、手っ取り早く科学の力で、というのから打ち水、風鈴、プールに避暑地、etc。
 暑い夏をいかに過ごすか昔から色々な方法が取られてきましたし、それが日本の文化にすらなっているくらいですから。
 その中の一つに怖い話をするというのがあります。
 怖い話をしたり聞いたり、こわあい映画を観たりして身体の中からスーッっとそれこそ肝を冷やそうっていうやつです。
 でも最近はこの効果の方はさっぱりって感じ。
 なんせ幽霊、妖怪なんか可愛いもので、それよりも生きている人間のほうがよっぽど残酷で怖い。
 魑魅魍魎とは麻のように乱れた人の心そのものって世の中ですからね。
 案外、お化けの方が人をみて肝を冷やしているのかもです。
 
 最近の事件もそうです。人のすることかって思いましたが、これは逆ですね。
 人間だからこそ、こんなことが出来るんだろうねってことです。
 
 幼い二人の子供の死体がマンションで発見された。
 死後数週間経っていて、原因は飢え死に。
 母親が育児が嫌になったと放棄して数ヶ月間部屋には帰らず、死体となって発見されるまでマンションで二人きりの幼子たちがどんな思いで生き、死んでいったのかと思うと、想像しただけでもう寒気が走ります。
 二人のうちどちらかが最初に死んで、残された方は死体と一緒の部屋で弱って動けずに死んだのでしょう。
 
 あまりに幼すぎて、自分たちが今置かれている状況を理解出来なかったでんでしょう。
 空腹でも何も食べられず、喉が渇いても水を飲むことも出来ず、締め切った部屋の中では暑くてもエアコンも付けられず、せいぜい服をぬぐことだけ。
 そんな中で、衰弱して最後には誰にも知られず死んだわけです。
 どんだけ苦しくて、悲しくて寂しかったでしょう。
 どうすればいいのかも分からず、たとえ分かっててもどうすることも出来ず死ぬのを待つしかなかった二人の幼子。
 母親が早く来てくれないかなと思ってたのでしょう。
 信じる信じない以前の問題で、疑うことすらしなかったでしょうから。
 ママのことを。 
 そのころ母親がどんな気持ちで、どこにいるのかも知らず。
 
 こんなことがあっても、すぐに忘れ去られてしまうんでしょう。
 私も含めて。
 いっそのこと幽霊にでもなって化けて出てくればいいのに。
 誰も文句言わんでしょう。
 ま、無理な話ですが。
 
 なんとも寒い時代、社会じゃないですか。