あの空をおぼえてる

 
 今上映されている方のではなく、それの原作ですね。
 表紙を見た時から何となく気になっていました。
 題名に空とあるのに、表紙の絵に空は描かれていませんし。
 
 最初は大判の本で高かったのですが、先日なぜか文庫本サイズで出ましたので購入しちゃいました。
 
 事故で亡くなった子供と、その残された家族の話です。
 兄弟で事故に遭い1人は助かったけど、1人は亡くなってしまった。
 壊れそうな家族を残った方の子供は一生懸命になって変えようと奮闘するのですが、その発想、考え方が本当に素晴らしくて。明日を疑わず、未来を見つめて思いっきり空に手を伸ばそうとする子供の姿勢に心打たれました。
 そして子供は大人が思うほど愚かではなく、大人の言っていることちゃんと聞いているんだってことも。
 
 『悲劇』は、悲しいことが起こった瞬間よりも、『その後、ずっと続いていく時間』のほうが、
はるかに過酷で、痛くて寂しいものだという持論があります。
 だけど、それでも、命があるからには、生きていかないといけないもので。
 そんな人を出さないためにも、人は人を死なせてはいけないのに、ついつい忘れてしまうのでしょうか。
 自分が死んで悲しむ人がいるのと同じく、殺した相手にもその人の死を悲しむ人がいて、これからその悲しみと一緒に生きていかなければならなくなるということを。
 
  
 本書に出てくる臨死体験とか、神様なんていう言葉はともかく、
 (だって神様は論外としても、死に臨んだら死ぬわけで、生きているのであればそれは臨死ではなく生の延長じゃないのでしょうか?生と死の境界を何処に敷くのかにもよるのでしょうけど、死とはもう、戻れないことなはずですから。
 臨死体験したと、生きている人間に話している時点で、その体験とは臨死ではなく、生あるうちの体験だと思うので。)
 生きること、残されたものが、失われた命が生きられなかった分どう生きるのかてな事を考えさせられました。
 
 生と死、ごちゃごちゃつい考えて、いくら考えても結論出ないの分かっていますが。
 でも友人の赤ちゃんを生まれてまだ間もない、それこそ片手に収まるほどの小さい命を抱き上げた時、本当にこんなに小さいのにそれでも生きているなんて、命があるなんて、で、育って大きくなるなんて。
 もう奇跡としか言いようがない気分になりました。
 生きるってなんなのか、十分にもうその子の存在が物語っていて。
 ふと思い出してしまった。

 この『あの空をおぼえてる』。
 いい本ですが、まぁ、お金払ってまで買うほどのものでは無いでしょう。
 最近は椅子やソファーを用意してある本屋さんなんかがあって、客は立ち読みではなく座り読みが出来るらしいので、そんな所で気が向いたら手に取ればいいかな?って本です。
 私は好きですが、人に薦められるかというと、どうもね。