白は白でも
勘違いと言いますか、ずっと間違えたまま覚えていた言葉っていうものは誰にもあるものでして。
私の場合、小学生の時に使っていた絵具の色に『やまぶきいろ』というのがあったんです。
これは当然山吹色のことですから、レモンイエローのような黄色ではなく、やや濃い黄色だったのですが。
私の場合なんでだか分かりませんが、これを “やまぶ黄色”だと思っていたんです。
“やまぶ”というこんな黄色の物があるんだなって思ってて。
つぅかさぁ、やまぶって何??という突っ込みをしてくれる友人は当時おらず、黄色い物を見るとあれってなんか“やまぶ”っぽいかもなんて思ったり。
正しい言葉の意味を知るのに、しばらく時間かかりましたが。
なんでこんな事思い出したのかと言うと、あるテレビで白山吹が咲いていますってレポーターが紹介していたんです。
これにはびっくり。
ちょっチ、まて!!
山吹が白くていいの???
って。
黄色くなければ山吹じゃないじゃんと思ったのですが。
聞くところによるとこの白山吹、黄色い山吹と似ているので、こう呼ばれているみたいですが、花の種類は全く違うのだそうです。
そしてもう一つの特徴はこの白山吹、黒い実をつけるのだとか。
これはますますもってイカンでしょう。
国語の授業でやった山吹と太田道灌のエピソード、これが台無しですから。
確かこんな内容でした。
突然の雨に蓑を借りようと太田道灌が農家の娘に頼んだところ、差し出されたのは山吹の枝が一輪。
それは娘が
七重八重花は咲けども山吹の(実)みのひとつだになきぞかなしき
という古の歌になぞらえて、“実の”一つをのところを“蓑”一つとかけて、ありませんということを伝えようとしたのだと。
とっさにこのような対応が出来るという昔の人の感性の豊かさ、教養の高さ、そして言葉に対するセンスの良さには本当に驚かされましたのでよく覚えています。
でも、もしこの時差し出されたのが白山吹でしたら、道灌にしてみれば…
七重八重花は咲けども山吹の(実)みのひとつだになきぞかなしき…って実があるだろにこれ、しかも4つもあるじゃん、ってなるわけでして。
もう台無し。
やっぱ山吹は黄色でなくちゃね。