オペラ座の怪人 後編
いよいよ開幕。
でもこの作品私のようにミュージカルに馴染みの無い人間でも一応のストーリを知っているほど有名ですし、映画を何回か観ていますのでほぼストーリーは知っているから、どうかと思っていたのですが。
始まりはオークションのシーンから。
映画のように絵はスクリーンを挟んで、音は編集された物がスピーカーからではなく、直ぐ近くで実際に人が演じているのをダイレクトに観るというのはこうも違うものかと、改めて思い知らされました。
なにせ舞台の何処を見ても全てが絵になるわけですから。
そしてあのシャンデリアのシーン。
ファントムジオペラの始まりです。
響いてくるオーケストラに震えすら走りました。
するすると吊り上げられるシャンデリア。しばらくすると視界から消え、第一幕の始まり始まり。
それにしてもこれ程有名でロングランを続けている作品なのに劇場は本当に古くて狭いものです。
日本でしたら最新設備の整ったホールを直ぐに作ることでしょうけど。
でもこの雰囲気のある劇場で上演されるというのもオペラ座の怪人の魅力なのかもしれません。
流石にイギリス、時代錯誤とレトロと懐古と温故知新全てを抱きかかえそれぞれの意味をよく理解しています。
華やかな歌声、テンポよく展開するストーリーにいつしか私も引き込まれたみたい。
つい夢中になって観ていたら目の前をさっと落下してきたのです。
それは先ほどのシャンデリア。
本当にびっくりして思わず「あぁ!!」って声に出してしまったのです。
まぁ小声でしたが。周囲の人が振り返ったくらいの。
し、しまったー。
ここでシャンデリアが落下するのを知っていたはずなのに。
ここで前半終了で休憩に入りました。
心臓がまだバクバクいってましたが
恥ずかしくってロビーに逃げました。
後半は前半以上に華やかで又急展開に。
結末分かっていても楽しめるのはミュージカルの魔法なのか。
特に最後のファントムの、それまで激しいものと違い、今にも消え入りそうなそれでいて聴く人全ての胸に沁みこむような愛を告げる歌には目頭が少し熱くなったくらいです。
許されない罪というものは確かにあるけど、それでも人を好きになってはいけない、ということは無いのでしょう。
思い通りにいかない、ままならない、そしてその度にいくつもの罪を重ねる、それでも人を好きになるのをとめられない、神が哀れむくらい愚かなのかは分かりませんが、でもそれはあまりにも悲しいからなのかな。
最後にファントムが玉座に座って自分のマントを頭からかぶりました。
すっぽりと完全に覆われて、隠れているのかと思ったのですが、今隠れたところでどうするのでしょう、それともこれから何かするつもりなのかな?
でもファントムを探しに来た人が怪しいそのマントに気付いて思いっきり引き剥がしたのです。
何の抵抗も無く軽々バッと中に舞うマント、見付かる!!と思った瞬間、信じられない光景が。
たった今まで座っていたはずのファントム姿は無くあの仮面が置いてあっただけなのです。
「なっ…!!」
思わず言葉が出そうになったのを何とか一文字で止めることに成功。
映像でならこんな事なんていくらでも出来ますが、まさか今自分が観ている目の前でこんなことがあるなんて思いもしませんでした。
本当に何処へ、いえ、いつ消えたのか分かりません。
トリックとは思わず、ファントムはオペラ座の闇に帰ったのだということでいいかも。
本当に観に来て良かったです。
この感動を知らずに帰ったのでは勿体無いです。
はた迷惑な客ですみませんと心の中で謝りつつ劇場を後にしました。
もし機会あったらもう一つぐらい観られるかな?