十年後の夏、また泣いた。

 僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。
 
 あのCMからもうさらに10年、かそれ以上経ったのね…
 
 近くの家の木にリンゴが実っています。
 うっすらと色づいていて、下を通る度に、もいじゃダメかな、カナカナ??
 なんて思ってて。
 でも実っているのは手が届かない場所ですから。
 ってそういう問題では無く、勿論ダメですが。
 
 幸せのお値段なんて記事をみたせいでしょうか、
 林檎の実を見るとかの名作『銀河鉄道の夜』を思い出します。
 氷山にぶつかって沈んだ船の乗客であった姉弟と家庭教師が、ジョバンニ達のところに来て、燈台看守からもらったリン一番ゴを分け合って食べるというあのシーンを。
 
 あれって見たことの無い漢字を使っていました。
 苹果と書いてリンゴとルビがふってあって。
 でもこの作品以外でこの字って見たこと無いのですが。
 
 読み返すそのたびに、新しい発見があり、いまだにその素晴らしさは色褪せることの無いこの作品ですが、冒頭に書いたジョバンニのセリフとそれに続く一連の会話は好きなシーンの一つです。
 そう、ジョバンニがカンパネルラに尋ねたあの一言。
「けれどもほんとうのさいわいはいったいなんだろう」
 
 紛い物やコピー商品の溢れ変える現代では、中々に本当の、と言えるものが見付けにくいのかもしれません。
 ホントにも嘘にも大して差が無ければ、本当が本当である意味って何処にあるのでしょうね。