模刻
さて、ラオコーン像ですが。
どうもヴァチカン美術館にあるほうがオリジナルなのでは?というところまでは分かったのですが、それではロドス島にあるラオコーン像というのは、いつ、誰が、どういった経緯を経て何故運んできたのか?というのは分からないままです。
それがはっきり分かれば確実なのですが。
うん、これは私にロドス島へ行けという啓示なのかもしれません。
美しい空と海が私を誘っているのかもって…ラオコーンは?
調べていて面白いことが分かりました。
ローマ帝国では、この像が製作された当時のギリシャの彫刻を権力者達はコレクションしたり、そっくり同じものを作らせて自分達の邸宅に置いていたのだそうです。
ヘレニズム文化により生み出された数多くの作品がローマ時代にそっくりそのまま製作されたことでしょう。
ヘレニズム文化といえばかの有名な、ミロのヴィーナス、サモトラ島のニケ像、この二つはルーブルで観てきましたなんかもそうですが、それ以外にも数多くの作品があり、それがローマ帝国時代にあちこちに行き渡ったり、復元されたり、模刻されたのでしょう。
ギリシャローマ時代と一つの括りにしてしまいそうですが、その間には何百年という時間の差がさりますから。
古代ローマ人がギリシャの彫刻や芸術を自分達の手で再現してさらに、自分達の文化を取り入れることで独自のものへと発展していったのでしょう。それがやがてはヨーロッパ文明となっていくわけなのですが。
いずれにしてもそれらはもう、贋作とかレプリカとかコピーなんて言葉でおさまるものではありません。
どちらも現代では博物館へ展示されるほど貴重なものになっているのですから。
大英博物館にも多くの古代の彫刻が陳列されていますが、その中には、こう説明されているものがあります。
この像は紀元前××年にギリシャにて製作された〜という作品を西暦××年ローマにて模刻されたものである、といった感じで。
つまりオリジナルは別にあるのですが、誰もこれを贋作だとか、レプリカだなんて言わないでしょう。
言えるはずがありません。
永遠に生きたいという願いを同じく永遠のものと思われていた石に託し彫り物として残した古代の人々の息吹が伝わってきそうなのですから。
そこに蓄積された膨大な時の記憶を抱えて今も静かに博物館にて陳列されています。
沢山のものを持っていても黙して語らず、だから今でもっても色々な方法で人間の方からアプローチしてその記憶のかけらを丹念に掘り起こしているのです。