自分探しってなんですか?

 午後になりますと、外を見ても、空を見ても今何時なのか分からなくなってきました。
 7時半になろうとしているのにまだライトを必要とはしていませんから。
 駅前の芝生には、おそらく長距離バス待ちの旅行者なのでしょう、幾人かの人達が気持ちよさそうに昼寝をしていました。それほど近くを歩いていなくても鼾が聞こえてくるくらいに。
 イースターホリデーということもあるでしょうし、気候もやっと落ち着いて春してますから、皆待ち焦がれたかのように外へ出たくなるのでしょうね。
 英国文学の代表ともいえるカンタベリー物語も、丁度今頃の時期に聖地巡礼する旅人達の物語ですから。
 
 山の彼方の空遠くにある幸求めて、又は、ここではない何処かに自分の居場所探したくなるのはもう、国籍や人種問わずのことなのかもしれませんが。
 日本より遠く離れてロンドンにいる私が言うのもなんですが。
 でも『自分探し』なんて恥ずかしいタイトルは止めた方がいいと思うのですが。
 それとも遠くに行こうと思いを馳せるには、今自分のいる場所を好きになりたくてのことなのかも。
 
 インペリアルカレッジで授業している時にこんな質問をしてみたことがありました。
「私たちが今いるこの場所から東へ4万km歩いていったら何処に辿り着くと思いますか?」
 って。中国や日本、アメリカなんて答えた子もいました。
 皆数字に惑わされてしまったみたいです。とてつもなく遠いとイメージしてしまったのでしょう。実際同じ方向に4万km歩き続けたら地球をぐるり一周してもとの場所に戻ってきてしまうのですが。
 遠くへ行こうとすればするほど、もといた場所に戻ってきてしまう。
 言い得て妙な話です。
 いい意味で。