ボランティアで日本語教師をしていますがそこの生徒さんから
村上春樹を教材として使ってほしいとのリクエストがありました。
 
 ここロンドンで有名な、知っている日本人作家はと聞くと
村上春樹の名は必ず出てきます。特に大学生ぐらいの人からは。
 他には吉本ばなな村上龍でしょうか。
 英訳された作品も沢山あり日本に興味がある人は手にとるのだとか。
 ですから日本語教師を目指す人はこういう作品にも触れておいた方が
いいかなと思い何はともかく学校でもっている人に借りて読み返しました。
 誰かしら必ず持っている人っているのですよね、この人の本て。
 他の作家なら誰も持っていない、知らないという人はいても。
 それにしても、教材にとは言ってもどう取り扱っていいものやら。
 作品は『ノルウェイの森
 これが一番リクエスト多かったので。 

 私がこの作品を初めて読んだのは高校生のときでした。
 それまで読んでいた本とは系統が全く違っていて随分と
衝撃的でした。
 村上ファンの人ってその衝撃が忘れられずに今でも熱心に読まれている人
多いのではないでしょうか。
 私自身はさほど彼の本は読まないのですが。
 
 改めて読んでみてこれをどのように授業で扱おうか悩みどころです。
 今の日本にはまだありそうで、実はもうなさそうでといったことが混在
していて。
 生徒側にしてみればこういう所から日本を垣間見るのですから
下手な事は言えませんし。
 そう考えていたのですがいつの間にか読みふけっていました。
 今読み返してみるとあの頃と違ってこの作品を一歩引いたところから
見ている自分がいます。
 初めて読んだときはこの作品の中に出てくる料理を始めお酒、レコード、本や人間関係、
恋愛感情、寮生活なんかに意味もなく憧れを抱いていました。
 一人旅から病院の食堂のランチにまで。
 でも今となってはそんな気持ちもさほど沸かず。
 大切なものってどこか遠くに違う場所にありそうな気がしていたのですが
いつだって自分のすぐそばにあったんだなって思えるからかもしれません。
 
 何処かに自分にとっての本当の居場所があるのかもって考えていた時期に
読んだから尚いっそうそういった憧れる気持ちが強かったのかもしれません。
 自分の居場所なんて今自分が居る場所以外の何処でもないし。
 ノルウェイの森に出てくるワタナベ君て誰の中にもあることかも。
 ただ彼が出会ったような人というのが中々居ないんじゃないかな。
 だから色々な思いを抱えてもそれを話すことが出来る相手に
巡り合えず、常に口にする言葉は本当に今自分が言いたいこととは別のことに
なってしまう。
 本当はもっと違う話をしたいのにそんな気持ちを別なことに
すり替えたり代替していくうちにホントの自分の気持ちを
見失ってしまっているのかも。
 だから彼がどこか羨ましく思えてしまってたのかな?
 いうなれば現代のおとぎ話、ってこれは少し言い過ぎかもですが
 ただこの面白さを説明するのは難しいですけどね。
 授業に扱うのは尚更。
 さてさてどうしたものでしょう。