10月30日 日曜日 曇りだったり晴れだったりでも雨も降る
 ゴーストツアーの続き、とは言っても今考えるとね。
 まずは屋敷の中の部屋をあちこちと周り各部屋に伝わっている怖い話を
 してくれました。
 が、当然英語です。
 拙い語学力を駆使して、聞き取れない部分は想像で補い聞いていました。
 全部分かればもっと恐怖も伝わってきたでしょうが。
 そしていったん戻ってきたら軽い食事とアルコールを取って
 いよいよこれからが本番です。
 先程まで周っていた各部屋に椅子がおいてあるのでそこに座って10分間
 待ち続けるのです、ゴーストを。
 勿論部屋は真っ暗にして。
 椅子の置いてある間隔はかなりありますので部屋を暗くしてしまえば
 誰が何処にいるかなんて勿論分かりません。
 しかも暗幕を降ろしていますから夜の闇ではなく本当に真っ暗、
 それこそ目の前にかざした自分の手のひらでさえ見えないのです。
 各部屋で10分、5部屋でそれを行いました。
 目を開けても閉じても変わらぬ闇が広がり続けている。 
 ホントに不思議な感覚に陥りました。
 段々とただ座っているだけなのに足元がぐらぐらするような間隔です。
 そして落ちているのだか上っているのだか分かりませんが、
 そう、あのエレベーターの中で感じられるような感覚でしょうか、
 それに襲われました。
 何処まで行ってもいつまで経っても真っ暗闇。
 これってゴーストよりもよほど怖いかもです。
 今だったらこの闇の中にゴーストが出たらかえってホッとするかもしれません。
 
 突然、闇を砕くようなけたたましい鐘の音。
 10分が経ったのです。
 電灯の明かりが目に付き刺さるようでした。
 10分と分かっていたはずなのに30分にも1時間にも感じられました。
 
 闇とは光の当たらない場所というよりも、
 闇とは闇として存在しているのかもしれません。 
 光のあるところとは命のあるところとすれば
 闇とは望もうと望むまいといずれは全ての命が帰る所。
 だから闇に対して怖いと感じるのかもしれません。
 完全なる闇に。
 夜の暗闇は星明り、月明かり、たとえ雨であろうと完全なる闇はありません。
 昼と夜を生と死に分けて考えているような話がありますが夜の闇と
 完全なる真っ暗闇は全くちがうものでしょう。
 命とは闇から生まれた灯火であって何れ消えるさだめにあり
 そして闇へと帰っていくとしたら、命が消えそうになるような錯覚に陥り恐怖を
 感じてもおかしくはないです。
 
 結局ゴーストには会えませんでした。
 一緒にまわっていたニックという人は霊感が強い人らしく
 あの部屋とこの部屋にはいたよと言っていたのですが。
 
 まあ考えてみればゴーストよりもよっぽど生きている人間の方が
 怖くて性質が悪いでしょうから
 こんなにぞろぞろとやって来られたらゴーストだって
 それは逃げ出すことでしょうけど。