飛ぶ夢をしばらく見ない

 最初にどちらが言い出したことかは覚えていませんが、友人と二人でとある高いビルの屋上にあるオブジェを見に行きました。
 誰が何の目的で作ったのか分かりませんが、かなりの高層ビルの屋上よりもなお高い位置にそのオブジェはありただずっと見上げていました。
 結局それがなんだったのかいまだに分かりませんが。
 青い空の中にぽっかりと浮かんだオブジェ。
 どのくらいの時間見上げていたのでしょうか、あまりにも長いこと上を見すぎていたためでしょうか、首を後ろに反らしすぎて、私はぐらっとバランスを崩し、背中から倒れそうになたのです。
 なんとか倒れまいと、そのままの姿勢でふらふらと後ろに進みました。
 そして手摺に身体を預けるように寄り掛かったのです。
 しかし背中にはあるべきはずの感触が伝わってこない…
 ええ?!っと事態を把握するまでにコンマ2秒。
 視界いっぱいに広がる青空と今では視界の端にぽつんと置きざられたようなオブジェ。
 
 手摺を越えて私は屋上から落下しようとしていくところでした。
 友人が何か叫んだらしいのですが何も届かず、いえ、未だに自分の置かれている状況が分かっていなかったのかも。
 最後まで考えていたのは、あのオブジェは何だったんだろう、ってことでしたでしょうから。


「で、その後どうなったの?」
 と私が聞くと友人は
「すぐ下のバルコニーに落ちてたの。怪我は無いみたいで、下から手を振ってた。」
 すごい夢を見たと言う友人の語った内容はこんな感じでした。
 ま、夢の中までお騒がせしてゴメンと言った感じですが。
 
 ま、普通に聞いていたら笑って済ませられる話ですがこの友人は予知夢というのを見ることの出来る子なので、正夢にならないことを祈るばかりです。
 当分ビルの屋上には行かないことにします。